電動ウィンチ付きオフロードバイク(2010/03/07掲載、2010/03/28追記)

 2009年9月末から10月にかけて1週間、オフロードバイクで北海道の林道を走ってきました。北海道の林道はスケールが大きく、キタキツネに出会うなど自然も多く残っており、とても楽しめました(熊との遭遇が懸念されましたが、「熊注意」の看板は見かけたものの、幸か不幸か遭遇しませんでした)。北海道には、一旦林道に入ったら次に一般道に出るまで60kmも走るような長い林道があり、その間誰とも遭遇することはありませんでした。林道はそのほとんどで携帯電話は圏外となってしまいます。その時に感じたのですが、ここでガス欠や事故などが起きて動けなくなった時、自分はサバイバルできるか(生きて帰れるか)ということです。

 自宅から日帰り圏での林道ツーリングでも大変な思いをしたことがあります。行き止まりと分かっている林道に入ったのですが、しばらく走ると廃道の雰囲気になってきて、最後は林道を斜めに塞ぐように大木が倒れておりました。倒木と崖の間に通り抜けられそうなわずかな隙間がありましたので近づいて行ったのですが、通り抜けるのはかなり危険と判断し、ここで引き返すことにしました。しかし、倒木と崖に挟まれたくさび状の先端部分ですのでUターンができず、トライアルライダーのような道なき道を走るテクニックも私にはありませんので、バイクを押して戻るしかありません。あいにく前日が雨だったのか、路面がぬかるんでおり、しかも少し下り坂を上に向けて押さなければなりません。140kg程度と軽量なオフロードバイクですが、この状況からの脱出に私は体力を大変消耗してしまいました。

 私は林道をかっ飛んで走るのではなく、自分のペースでのんびりと走り、思い立ったら即日出かけたいので、仲間とのグループツーリングではなく、どうしてもソロツーリングが多くなります。林道を走っているとソロツーリングの人をよく見かけるので、私と同じように考えていらっしゃる方も多いのでしょう。ソロツーリングということは一緒に走ってくれるパートナーがいませんので、その助けはありません。

 林道走行は転倒が付き物ですので転倒の際のダメージを最小限にするため、エンジン・アンダーガード、クラッチレバーやブレーキレバーの破損を防ぐハンドルガードなどのオプションも一緒にバイクを購入しました。また、自分自身の体を保護するために、肩、肘、胸、脊髄、膝にプラスティック・パッドの入っているライダージャケット及びパンツを愛用しております。しかし、上記のような経験をして、これだけでは自力でのサバイバルには不十分と感じ、対策を考え始めました。

予備タンク

 私のバイクはガソリンが少なくなると燃料警告ランプが点灯し、そこから燃料切れでエンジンストップするまで走ってみると、60km程度走れることを確認しました。燃費は通常30km/リットルを下回ることはありません。北海道の林道は前述の通り長距離のものがありますが、私がよく行く我が家から日帰り圏内の林道は、全長20kmを超えるようなものはほとんどありません。燃料警告ランプの点灯を見落とし、林道の中間地点で燃料切れになるという最悪の事態を想定しても、10km走行できる燃料を余分に持っていれば、一般道に出られることになります。ということで一番小さい500ccの予備タンクを購入・携行し、林道の途中でガス欠になっても一般道に出て、ガソリンスタンドをなんとか探せる15km程度は余分に走れるようにしました。

電動ウィンチの入手

 上記の倒木でふさがれた林道のような状況や、ちょっとした崖から落ちてしまった場合にバイクを引き上げるため、2連(2シーブ、引く力が引き上げる重量の4分の1で済む)ブロック(滑車)2つと10m程度は引き上げられるように太さ6~8mmで50mほどの長さのナイロンロープを準備しようと考えました。しかし、ブロックに必要な強度を求めると結構な大きさと重量になりますし(価格も結構高価です)、50mのロープもかなり嵩張ります。ナイロンではなくワイヤーロープですと細くても強度が確保でき、リールに巻いておけるので好都合と考え、手動ウィンチも検討しましたが、手動レバーがかなり長く常時携行するようなものではありません。
 小型の電動ウィンチがないか探すと、ヤフーオークションで比較的小型かつ手頃な価格(送料込みで7,000円程度)のものが出回っており、写真の一番小さなタイプのものを早速購入しました。届いたものはコントローラーやローラーフェアリーダーがセットになっていて、一番小さなタイプと言っても最大牽引力は680kgと強力です。ちなみに680kgで牽引できるのはリールにワイヤーロープが巻かれていない状態のときで(見做しリール径が一番小さい)、幾層にもロープが巻かれている最後の状態では(見做しリール径が大きい)400kg程度の牽引力に落ちてしまいます。

事前配線

 この電動ウィンチをどこに取り付けるかですが、リアキャリア以外に考えられません。また、必要な時に簡単に取り付けられるように工夫してみました。
 まず配線ですが、電動ウィンチを利用せざるを得ないような緊急時に、その場で車体のシートやカバー類を外してバッテリーから配線するのは現実的ではないので、事前にリアキャリアまで配線しておくことにしました。この配線にはセルモーターの配線よりも多くの電流が流れますので(最大90A)、セルモーター用の30Aのヒューズを介さず、直接バッテリーにつないでおります(安全性を考慮し、後日90Aのヒューズを設けようと思います)。

電動ウィンチの格納場所

 電動ウィンチを常時取り付けておくのは武骨で邪魔ですし、雨の中を走行したりするとワイヤーロープの錆びが心配です。リアキャリアに乗せられる荷物にも制限が出てきますので、普段は予備タンク、レインウェアなどと一緒に小型のリアトップケースに格納しております。

電動ウィンチの取付

 電動ウィンチはリアキャリアに取り付けますが、取り付けにはリアトップケースの取付金具を兼用することにし、両者の取り付け方の違いにより、2つの金具のうちの1つを少し短くカットしました。電動ウィンチに付属していた取付用のボルトとナットは、それぞれ異なるサイズのレンチを必要とするような代物でしたので、これをステンレス製の同じレンチサイズで済むものに交換し、取付時の作業性を向上させました。ステンレスにしたのは、トップケースを外してウィンチを取り付ける際に、ボルト・ナットが錆びていて外せなくなるような事態を避けるためです。
 リールに巻かれているワイヤーロープは7.5mと少々短いのですが、長さ5mの帯ロープを2本準備して、引き上げるポイントを移動しながら長い距離でも引き上げられるように考えております。帯ロープにしたのはロープを立木に結ぶケースが多いはずですので、その立木をなるべく傷つけない配慮です。
 この電動ウィンチを利用するときは、エンジンをかけたままにしておきます。私のバイクはキャブレター方式ではなく電子噴射方式(インジェクション)ですので、バッテリーが完全に上がってしまうと、押し掛けでもエンジンはかからなくなってしまうからです。

牽引力テスト

 右の写真は電動ウィンチの牽引力をテストしたときのものです。期待通りバイクを軽々と吊りあげてしまいました。

趣味でもリスク管理!

 ここまで対策しても怪我をしてしまった場合など、動けなくなる可能性はまだ残ります。バイクによる林道ツーリングという少しだけ危険を伴う趣味を持ってしまったのですが、社会人・家庭人としての責任を果たさなければなりませんので、万全を期しておきたいという強い思いがあります。いよいよ動けなくなった場合の最後の手段として、GPS機能付きアマチュア無線のハンディー機(とても小さなものが出回っております)を身につけていようかと考え始めております(高校時代に電話級アマチュア無線技士の資格を取りました。2010/03/28追記:年度末決算セールの秋葉原でSTANDARD社製VX-7(GPS機能なしなのでカーナビで代用)というハンディ機を定価の約半額で購入しました)。

 私は人がやりそうもないことでも、自分で合理的だと考えたことは行動に移します。電動ウィンチを装備しているオフロードバイクなんて聞いたことがありませんので、自分のバイクが第1号だろうと一人ほくそ笑んでおり、お酒の席での話のネタとしても面白そうです。難点は付属品込みの電動ウィンチの重量が10kgもあることです。リアキャリアの積載制限重量が5kgなので少々心配ですが、このキャリアを介して140kgのバイクを持ち上げられたのですから静的強度は充分です。メーカーはかなり安全率を見込んでいるはずですし、上下方向の加速度を過度に生じさせない私の運転であれば、大丈夫であろうと判断しております(メタボ気味の体から10kgの脂肪を減らすのが一番安全)。

 ここまで書いて、ふっと気付いたことがあります。私はここ数年リスク管理の仕事をしておりますが、このリスク管理の考え方が頭の中に染み込んでいるらしく、趣味の世界でも無意識にリスク管理していることが分かりました(笑)。

なお、上でご紹介した写真以外のものも含め、拡大写真はこちらでご覧いただけます。


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