CAAT活用監査支援(内部監査)

CAATとは
 CAATはComputer Assisted Audit Techniquesの頭文字をとったものであり、日本語では「コンピュータ利用監査技法」と呼ばれる、監査を実施する際のテクニックのひとつです。
 広い意味では、OAソフトを利用して監査計画書、監査手続書、監査調書、監査報告書等を作成するのもCAATですし、テストデータ法や並行シミュレーション法などのシステムに実装された内部統制(IT業務処理統制)を検証する技法もCAATですが、ここでは電子化された監査証跡の検証を念頭に置いております。
 企業・組織の様々な業務プロセスはシステム化され、業務の効率および正確性の向上が図られてきましたが、その結果、企業・組織の活動記録もコンピュータにデータベースとして蓄積されるようになってきました。
 従来の監査においては、活動記録を確認するために紙により残された文書を閲覧してきましたが、紙による証跡がコンピュータのデータに置き換わってきたことにより、監査はCAATを利用せざるを得ない状況になりつつあります。

CAATの普及
 現在の企業・組織の活動がコンピュータの支援を大きく受けるようになってきたにもかかわらず、内部監査においてCAATの活用はそれほど活発に行なわれてはいないようです。CAATの利用を一度でも経験すれば、その有用性を高く評価できるのですが、それほど普及していないのはなぜなのでしょうか。
 確たる根拠があるわけではありませんが、企業・組織の内部監査部門にITに強いスタッフが少ないこと、CAATを使いこなすために求められる知識・スキルの範囲が広く、そのハードルが高いことがその要因ではないかと感じます。監査がパターン化されていれば、CAAT活用もパターン化されますが、様々な監査テーマが考えられる業務監査中心の内部監査では、パターン化が難しいということも推測されます。
 今までの経験から、CAATを活用した監査に必要な知識・スキルは次の通りです。

・ ITスキル(データベースのハンドリングスキル、特にSQLと呼ばれる検索言語の高度な活用能力)
・ 監査スキル(どの情報からどの情報に対して突合・検証するのか、あるいはどのような分析的手続きを実施するのか)
・ 業務知識(どの業務プロセスでどのような情報が生成・加工され、いつどのように記録されるのか)
・ 会計知識(取引・事象に係る全社レベルの金額情報を取得するのに欠かせませんし、仕訳勘定の妥当性判断も必要)
・ 内部統制知識(発見された逸脱を以降発生させないため、どのような対策を提言するのか)
・ 具体的な監査テーマ対して、CAATを適用する発想力

 これらの知識・スキルを個々の監査人が一人ですべてカバーできるのが最も効果的ですが、難しければ複数人でカバーし、チーム内の密なコミュニケーションを行なうことにより補えます。

試査から精査へ
 監査は一般的には取引・事象の全件を検証(精査)するのではなく、サンプリングによる検証(試査)で行なわれ、試査の結果から元になる母集団の性質を推し量ります(統計的サンプリング)。サンプルの逸脱の程度により母集団全体の逸脱の程度を推測するわけです。しかし、たとえば「無駄な出費」を把握し、これを是正しようとする場合、サンプル調査から母集団全体の無駄な出費の総額を推測できても、具体的に全ての無駄と評価される取引・事象を発見しなければ、無駄な出費をすべて排除するという実効性を確保できません。そのためには試査(サンプリング)ではなく、精査(全件検証)する必要がありますが、CAATを活用すれば、全件検証できる可能性が高まります。証跡が外部から送付された請求書や受領書などの紙情報で取引件数が多いのであるなら精査は困難ですが、コンピュータに蓄積された内部資料(データ)を利用できるのであれば、積極的に精査の可能性を検討してみましょう。

不正調査
 CAATは役職員の不正行為の発見にも役立ちます。たとえば、電子承認システムを導入している企業・組織で、CAATによる調査によりある取引の記録者と承認者が同一人であることが判明した場合、そのような取引の件数が少なからず存在し、同一人物が関わっているとしたら、不正取引の兆候が読みとれます。詳細に調査すべき取引・事象が容易に絞り込める可能性が高いのです。
 今までCAATは不正調査のためのツールという捉え方をされることが少なからずあったので、どちらかというと不正調査が主たる活用場面だと理解されている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、上述した通り一般の監査に対しても、その強力な有用性を適用したいものです。

CAATツール
 CAATの実践をより容易にするために、専用のCAATソフトウェアが市販されております。このような専用ソフトウェアを使用すれば便利であり、CAAT導入のハードルを低くしてくれますが、なければCAATを実践できないというわけではありません。弊社ではデータベース管理システム(DBMS)に標準で添付されているデータ抽出ツール、マクロを利用できるテキスト・エディター、MS-Excelを使いますが、それだけで十分な効果をあげております。

実務とスキル・トランスファー
 弊社の「CAAT活用監査支援」サービスは、実務を伴わない助言サービスではなく、内部監査部門のスタッフと一緒になってCAATを実践し、スタッフの方々へCAAT活用のスキル移転をすることに特色を有しております。